看護師転職をする際、科目を重視して求人を探す方もいらっしゃると思います。

今回は消化器外科看護の実際の業務内容などを見ていきましょう。

1     消化器外科の業務

消化器は、食道、胃、十二指腸、胆嚢、すい臓、肝臓、大腸、小腸、S状結腸、直腸にいたる食べたものを消化・吸収する器官全般を指します。その器官におこるトラブルを、外科的に処置するのが消化器外科の仕事です。ざっと見ても分かる通り、扱う器官の多さは他の診療科に比べ圧倒的に多いのが特徴です。例えば、脳外科なら主に脳だけ、循環器なら主に心臓だけですが、消化器外科の扱う臓器はこれだけあり、それぞれの臓器の特徴もありますので、幅広く覚えなければならないことも少なくありません。

これらの臓器で、外科的に処置するトラブルといえば「悪性腫瘍」が多いでしょう。消化器で外科処置が必要となると、ほとんどが悪性腫瘍、いわゆるがんです。他の診療科に比べて、がんを扱うことはかなり多くなります。がんの場合は、手術をすればすべて終わりでは無く、外科手術後に放射線療法や化学療法を行うことが多く、これらの知識も必要になります。

また、放射線療法や化学療法をしていく患者さんは、術後も今度は放射線療法やケモ(化学療法)のため再入院する、などがあり同じ患者さんと長い付き合いになることが少なくありません。

2     消化器外科の役割

消化器は食べたものを消化し、吸収し、排泄する、という人間の基本的な営みと共に「楽しみ」を支える臓器です。疲れたら美味しいものを食べてストレス発散したリ、コーヒーを飲んでリラックスしたり、家族や仲間とランチや会食したり、食べたり飲んだりすることは生命の維持だけでなく、大きな部分で人間の喜びも作り出すものです。

消化器にトラブルがある人は、その楽しみを奪われています。治療がスムーズにいくことが最も大切なことですが、やはり以前のように好きなものを食べたり飲んだりできない状態で、病院にいるのはかなりストレスのたまることでしょう。これらの感情に気づいてケアしていくことも消化器外科看護の特徴と思います。

また、手術が済めば元通りに食べられる、ということも消化器外科に関しては実は多くはありません。消化器外科の手術は腫瘍などのできものだけを切り取るのではなく、腫瘍が発生している元来の臓器にもメスが入ります。消化器に発生するがんは、がんだけ単独で存在することはあまりありません。何らかの臓器を巻き込んでいます。消化器を手術する場合、再発防止のため「切除範囲の正しい選択」というのが、予後を決定するくらい大切になるのですが、肝臓にしても胃にしても、腫瘍が巻き込んでいる部分を正確に判断し完全に切り取ることが必要なのです。

そうすると、術後に胃や肝臓は3分の一になってしまったり、胆嚢を切れば吸収が悪くなるので食べられるものに制限が出てきます。直腸はすべて切り取らざるを得ないので人工肛門を造設する事態になります。つまり、術後には以前とおなじように飲んだり食べたりできるか、といえばそうではなく、術後もずっと飲食に関して制約を抱えていくことが考えられるのです。

これらのことをすぐに受け入れられる患者さんは、それほど多くありません。また、手術前の説明では理解したけれど実際に術後に自分のボディイメージの変化を見て、ショックを受ける方もたくさんいます。そういう状態に関する、精神的ケアも消化器外科看護の重要な、特徴的な役割といえます。

3     私の消化器外科での体験談

300床の総合病院にて経験年数は5年です。年収は350万円くらいでした。

私は新卒で最初に配属されたのが消化器外科でした。日常的に覚えること、慣れることに追われてとても患者さんの精神的ケアまでできない状態でしたが、とにかく見た目が変化している人が多くて衝撃を受けることが多かったです。肝臓や胆嚢に疾患を抱えて入れば、肉眼的にも「真っ黄色」という状態ですし、胃癌の末期の方の痩せようも驚きました。初めて人工肛門を見たときは、どこを触っていいか分からなくて適切なケアができませんでしたし、食べられなくてひもじくて氷を舐める人を見たときは切なくて近寄れなかったこともあります。

新卒だったこともあり、ほとんど患者さんに育てていただいたような状態でした。その中で鮮明に覚えているのが、すい臓がんの患者さんで「全身が痛い」と、最初整形外科に来院され精査の結果すい臓がんの末期だとわかった患者さんがいました。まだ50代と若かったのですが、即入院になってしまいその後すぐに体力が弱って一時帰宅することもかなわず、どんどん衰弱していきました。家族とのトラブルがあって、その状態でも連絡がとれずやっと来られたお兄さんと、何も話せずお互いに立ちすくんでいる状態で、お兄さんが「手遅れなんですよね」とポツリ聞いてきました。返答に困って「あの…このあとムンテラしますから」と逃げてしまいました。

そのあと、お兄さんと患者さんにムンテラしたのですが二人とも押し黙ったままでした。その夜検温に伺うと、ほとんどしゃべらなかった患者さんが突然「俺は母さんの苦しみの千分の一も万分の一も分かってなかった。今天罰が当たってるんだ」と言ってきました。その苦悶の表情をみて、何も言えずただ同情なのか、怖くなったか、苦しくなって涙が止まらなくなりました。その患者さんは、一人で生きてきたから遺品を他者に触られたくない、自分で片付けたいと一時帰宅を強く望んでいましたが、すでに立てる状態でなく家族のフォローも無く叶わないまま亡くなってしまいました。肝臓やすい臓のがんの進行の速さ、残酷さを思い知りました。

ただ、早期発見できて完治していくことができた患者さんも多数います。ボディイメージの変化を受け入れて前向きにがんと闘う人に、かなり励まされもしてきました。

4     消化器外科で働いて辛かったこと、よかったこと

辛かったことは、やはり「がん」という病名を告知する瞬間です。また、手術で開けてみて「転移が思ったより多くとりきれなかった」などという宣告に立ち会うことです。今思うと、本当に申し訳なかったのですが新卒の私は、同情して泣いてしまったりもしました。ただ、あるとき「看護師さんは明るくしてて。看護師さんが暗いとこっちが慰めなくちゃいけなくなっちゃうよ」と言われ、本当に辛いのは誰なのか、泣きたいだけ泣かせてあげなくてはいけないのは誰のか、はっと気づかされました。それからは、泣いてしまう患者や家族のために、できるだけ静かな空間をよういしたり背中に手を当てられるように、寄り添えるようでいたいと思ってます。

良かったことは、手術がうまくいって帰宅して「○○を食べられた」「○○を飲めた」などを聞く時です。手術というリスクの高い手技を受ける時は、だれもが当然のように完治を目指します。手術までしてうまくいかなかった、というのは受け入れがたいものです。退院後もリスクを抱えながら前向きに生きている患者さんの姿はうれしかったです。

また、看護師としても人間の基本的な消化器全般が学べて、手術に入れば解剖生理も一目瞭然でかなり知識がついたと思います。覚える臓器や手技は多いですが、かなり勉強になりました。

5     消化器外科に必要なスキル、読んでおくと良い本など

消化器外科に関しては、手術だけでなくドレーン類の留置など処置も多くあります。術後の患者さんが、人工肛門を使えるようになるための技術的ケアも必要です。そして、前述したように治療の副作用や禁飲食やボディイメージの変化に苦しむ患者さんに寄り添う気持ちも必要です。処置が多いのですが、処置屋さんにならずコミュニケーションも取れることが必要だと思います。

また、読んでおくと良いのはまず消化器は解剖がすべての始まりです。神経の走行も含めた解剖の本は有効だと思います。そして、それら臓器の生理も必要です。その臓器が侵されるとどんな影響が出るのか、解剖生理が分かれば疾患は自ずと見えてきます。

また、各処置の基本的なスキルを網羅した本は一冊あると便利です。ドレナージの管理の方法や観察項目などを専門的に書いてある本が、1000円前後であります。

6     消化器外科で働くメリット

その分野の専門知識を学べるのはどの診療科でも同じですが、消化器外科に関しては消化器全般の疾患や手術療法、放射線療法、化学療法、そして各ドレナージ術、禁飲食時の処置やケアなどかなりの手技について基本を学べます。

また、単に外科ではなく、長期に「がん」と向き合う患者さんとお付き合いすることが多いので、内科的なコミュニケーション能力についても考えることができるでしょう。そして、たとえば人工肛門などを作って退院する患者さんは今後、病院のように設備の整った場所でケアしていくわけではありません。日常にあるものでケアしていかなくてはならないので、そういった創意工夫や想像力も身についていくように思います。

7     消化器外科に向いている人、いない人

やはり「がん」を扱うことが多いので、その病名や告知の重さにつぶれてしまう人は向かないのではないでしょうか。がんを患っている患者さんにも明るく笑顔で接することができる人、静かに向きあいたい患者さんには強烈な笑顔が苦痛のこともあるので、そういうときには静かに落ち着いていられる人が良いと思います。新卒の私のように一緒に泣いてしまうのも良いときもあるかも知れませんが、主役を奪ってしまっているような状態なので、引きずられてしまう人は向かないように思います。

手術や、放射線療法や化学療法や禁飲食に関しての処置は多いですが、しばらくいれば慣れると思います。やはり一番は、がんや告知、転移などのシビアな状況に相対しても一緒に落ち込まない、切り替えができる人が向いていると思います。

8     良い求人を探すには

消化器はたくさんの臓器があって、医師も得意分野があります。肝臓や胃など専門に分かれているときもあります。その病院で扱っている手術症例や件数は分かると、その病院での業務の特徴は見えてくると思います。忙しくないことは無いと思うので、残業に関してなどの情報を得ておくことは他の求人でも同じでしょう。

また、求人と直接は関係ないですが、消化器外科での看護を追求するなら「内視鏡専門認定看護師」をとるのはお勧めです。2年くらいはかかってしまいますが、今は手術も開腹しないで内視鏡で進めることも増えてきました。また、内視鏡専門認定看護師の学習自体だけでも、消化器全般がかなり詳しく網羅できます。かなりお勧めの資格です。