「脳神経外科」と聞いて多くの方にイメージとして持たれるのが「頭がいい人が多そう」「力仕事が多く大変そう」というもので、このイメージから自分には働くことができないという人が多くいます。

その一方で実際に脳神経外科で働いた人に話を聞くと、「脳神経外科が1番楽しい診療科」「脳神経外科以外で働きたくない」という意見を多く聞きます。

脳神経外科で実際に働いたものから見た、脳神経外科についてお伝えしていきます。

ぜひ参考にしていただければと思います。

脳神経外科の業務

 

脳神経外科の業務とはどのようなものがあるのでしょうか。

病棟業務での業務は、基本的に他の病棟と同じではありますので、現在もしくは過去にご経験されている病棟での業務を振り返ると大体お分かりいただけるかとは思います。

そのため、ここでは脳外科特有の2大業務をご紹介していきたいと思います。

 

・術後管理

 

ICUやHCUがある病院でも、超急性期を脱してしまえば、病棟に帰ってきます。

脳神経外科のほとんどが、自分の病棟にHCUを併設しているところが多く、術直後から診ていくというところが多いように感じます。

そのため、他の診療科よりも術直後の看護業務が多くなります。

 

・病棟内リハビリ

 

脳神経外科ならではの業務といえばこの病棟内でのリハビリ。

もちろん、リハビリスタッフが決められた時間でリハビリを行ってくれるものの、脳神経系を損傷した患者さんでは、罹患してからどれだけリハビリを頑張ったかによってその後のADLに大きく影響します。

そのため、リハビリ時間以外の病棟内でのリハビリは非常に大切な業務となります。

特に、摂食嚥下の分野ではリハビリスタッフの関われる時間が少ないため、病棟内でいかにリハビリを取り入れられるかが、患者さん回復のカギとなります。

 

脳神経外科の役割

 

脳神経外科の役割とはどのようなものなのでしょうか。

脳神経外科の役割は、いかに残存機能を生かし、社会復帰できるかになるかと思います。

他の診療科では、病気を患っても完治をすればほとんど日常生活に障害を生むことなく生活できると思います。

しかし、脳神経外科では、病気を患うとそれに伴い、身体や精神の機能をいくらか損なうこととなります。

そのため、残存機能を生かしてどうやって社会生活を行うか、受傷直後から退院後までを見通した看護を行うことが脳神経外科の役割になるかと思います。

 

私の脳神経外科での経験談

 

病床数300床ほどの中規模の病院の脳神経外科に3年間ほど勤務しました。

地域に根差した病院というのが理念であったにもかかわらず、脳神経外科に特化しており、脳神経ケアユニットという脳神経系の疾患を集中して診る環境が整っていたことが入職の大きな魅力でした。

夜勤は月3回ほどで済み、年収も夜勤手当てのみで450万円ほど得られることも魅力でした。

HCU併設の病棟であったため、術直後から退院まで患者さんと関わることができることで、周手術期の看護から、回復期、退院調整など様々な分野の看護を学ぶことができました。

また、脳神経系に特化している病院ということもあって、一般病院では見られないような症例を診ることもでき、脳神経外科を学びたいという気持ちが強かった自分自身にとって大変勉強になりました。

 

脳神経外科で働いて辛かったこと・よかったこと

 

脳神経外科で働いていて楽しかったことやよかったこともありましたが、辛いこともたくさんあったことは事実です。

 

・脳神経外科で働いてよかったこと

 

脳神経外科で働いてよかったことは、やはり前述してきたように、術前、術後、退院後まで幅広い分野の看護を学べたことにあるかと思います。

脳神経系の疾患は医療者が関わった量と回復の過程は比例しているように思えます。

そのため、自分のかかわりが目に見えて患者さんの回復につながっている姿を見られることは楽しく感じていました。

また、近年脳神経系の疾患は増加傾向である一方で、脳神経系で働いた看護師は少なく、脳神経に関するスキルがない人が多いように感じます。

そのため、働いていたことによって、他の診療科へ異動となってもずっとその知識は使える上に、他のスタッフからも知識を求められるため、難しい分野ではあるものの、脳神経の知識は身に着けておいてよかったと痛感しています。

 

・脳神経外科で働いて辛かったこと

 

それぞれの診療科で辛いことは様々あるかと思います。

脳神経外科で働いて辛いことは、まず何といっても力仕事が多いことです。

脳神経系の疾患を患う人は、生活習慣病を罹患している方が多く、その性質上、ふくよかな人が多いように思います。

その上、麻痺や意識レベルの低下などによって協力動作が得られないため、自分の倍以上ある体重の患者さんを1人で介助しなければならないこともあり、とても辛いものでした。

また、脳神経系の疾患を患うことで、脳血管性認知症、前頭葉の損傷により抑制がきかないなどといった脳疾患に伴う精神状態から、罵言を浴びせられたリ、暴力を振るわれることも。

もちろん、疾患によるものであり、一時的であると分かっているものの、やはり精神的に辛くなってしまう人も多かったように思います。

また、神経系の難治性の疾患ではどんどんいろいろなことができなくなっていく患者さんを見て、特に長年診てきている看護師が精神的に辛くなるということもありました。

 

脳神経外科に必要なスキル・読んでおくと良い本など

 

やはりどの診療科で働いていても看護師として必要なスキルがあるかと思います。

脳神経外科では、看護師としての様々なスキルに加えて、やはり脳神経についてのスキルは必須となるかと思います。

数年前に行われたカリキュラム改正によって脳神経系の学習が必須となりましたが、それ以前に資格を取得した方では、脳神経系の学習は学校で十分教わっていないように思います。脳神経外科で働きたいという方はまず身に着けておいてほしいスキルとなります。

それに加えて、意識レベルの低下や失語によって自分の状態を説明できない人が多いのが脳神経外科。

そのため、もう一度文献などで全身のバイタルサインチェックについて見なおしておくといいかと思います。

また、リハビリについてのスキルがあると、特に有利なのではないでしょうか。

さらに、退院後を見据えた看護を展開していくことが多い中で、入院前と退院後ではADLがかなり変わる患者さんが多いです。

そのため、介護認定などのスキルもあると、一目置かれるのではないでしょうか。

 

脳神経外科で働くメリット

 

脳神経外科で働くことにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

・全身状態の把握ができるようになる、幅広い知識が身につく

脳は生命の中枢を司り、全身を管理している器官となります。

そのため、他の診療科よりも全身の機能について知っておかないといけないため、全身状態の把握ができるようになり、それに伴い知識は幅広くつけることができます。

脳神経外科出身の看護師は頭がいいといわれる所以はここにあるのかもしれません。

 

・リハビリの知識が身につく

病棟内で自分たちがリハビリをすることがあるため、リハビリの知識もつけることができます。

そのため、急性期以外、回復期でもすぐに働くことができるようになります。

 

・力がつく

自分の2倍以上の体重の人に対して介助を行っているため、入職してからかなり力がついたという人が多くいます。

実際自分も、入職するまでは、かなり貧弱でしたが、脳神経外科で働いてからだいぶ力がつきました。

 

脳神経外科に向いている人・いない人

 

脳神経外科で働きたいけど自分が適正かどうか不安という方のために、脳神経外科に向いている人、向いていない人についてお伝えしていきます。

あくまで一例ですが、参考になればと思います。

 

・脳神経外科に向いている人

*さばさばとした性格の人

前述したように、疾患による障害から心無い一言を言われることも。

受け流せる、深く考えないさばさばとした性格の人が実際に働いている人の中でも多いように感じます。

 

*学習意欲がある人

脳神経外科の分野はまだまだ医療の世界でも未知の分野とされていて、今現在、脳神経

系は全体の3割ほどしか解明されていないといいます。

そのため、日々勉強が求められる診療科であり、実際、勉強会などに参加する機会は

多くあります。そのため、学習意欲が高い人が求められます。

 

*腰痛、関節痛など整形的な疾患がない人

脳神経外科では自力で歩ける人は少なく、介助を要する人がほとんどです。

そのため、どの診療科よりもトランスを行う機会は多くなります。

腰痛、関節痛に後々なることはしょうがないにしても、これらの痛みを抱えたままの就業は長く続かない傾向にあります。

整形系の痛みを抱えている人は治療するなり、対策を考えておくことをお勧めします。

 

・脳神経外科に向いていない人

*患者さんの一挙一動に考え込んでしまう人

前述したように、何気ないけども傷つく一言を発せられたときに「病気だから仕方がない」と割り切れない場合は、脳神経外科で働くことは難しいでしょう。

 

 

*血液を見ることが苦手な人

脳神経外科は意外に点滴も多く、ドレーンを留置している人も多いことから、体液を見る機会は少ないですが、血液を見る機会は多くあります。

血液を見ることが苦手な人は考えたほうがいいと思います。

 

 

*力仕事が苦手な人

前述してきたように、麻痺や意識レベルの低下によって、トランスに協力動作が得られないため、9割が力仕事です。

力仕事が苦手という方は考えたほうがよさそうです。

 

*人を待つということが苦手な人

脳神経外科では麻痺があるため、スムーズに移動ができない、失語があるため、会話をするのに時間がかかるなど何かと待つ機会が多いです。

そのため、待つことが苦手な人にとってはうまく患者さんとコミュニケーションをとることが難しくなるかと思います。

 

いろいろと書いてきましたが、自分自身は脳神経外科で働いたことによってその後の看護師人生いろいろな場面でこの時の経験やスキルが役に立っています。

脳神経外科の分野は脳卒中疾患の増加によって今後需要も高まるためぜひ一度挑戦していただきたいと思います。