2793555d0f79b3904276bc80964134ff_m

 

同じ看護師と言っても、科が違えば職務内容は大きく違います。

その中でも特に「精神科」の看護の職務内容は特殊であると言えるでしょう。

今回は精神科で働く看護師Sさんに筆をとっていただきました。

 

128727s近年どんどん細分化されている医療業界、どんな分野にも独特の文化があると思います。

そして一般市民はもとより、時には医療従事者にも距離を置かれがちな精神科にも、身体科とは一味違った面白さがあります。

総合病院の精神科、身体科(消化器、脳外、地域連携)を経て、精神科単科病院で働いている精神科好きナースが、精神科の面白さを紹介したいと思います。

 

1、精神看護の基本は患者さんとのコミュニケーション

 

これは看護師の皆さんなら一番に思い付くのではないでしょうか。

看護師という仕事がそもそも、コミュニケーション能力が必須なものですが(看護学生になって最初の授業で、看護には受容と共感が大切だと習いますね)、中でも精神科では高度なコミュニケーションスキルが必要となります。

その理由としては、精神科の患者さんは他者と関わるのが苦手だったり、疾患のために正常なコミュニケーションが取れない場合も多いからです。

とは言え、誰とでも明るく打ち解けられる話し上手・聞き上手なタイプだけが向いている訳ではありません。

プライベートでは口下手でも、看護技術としてのコミュニケーション能力を磨けばよいのです。

後述する項目にも関わりますが、精神科を好んで働くスタッフは、日常生活ではむしろ内向的な人が多い印象もあります。

どちらにしても、人と関わることが好きな人には向いている職場です。

また、患者さんの性格も様々ですから、人によって話しやすいタイプも異なります。

患者さんの方から看護師の性格を見極めて、自分にとって話しやすい人を見つけてくるので、患者さんにとっても、看護師の性格のバリエーションは豊かな方が都合がよいのです。

コミュニケーションに不全感を抱え、生きづらささえ感じている患者さんと信頼関係を築いていくのは、精神看護の醍醐味と言えるでしょう。

 

2、精神科におけるドクターとナースの役割

 

精神科では、身体科に比べて点滴などの処置 は多くありません。

しかし、ある部分では、身体科以上に看護師の役割が大きい部分もあります。

それは上述したコミュニケーションに他なりません。

精神科の入院患者さんの場合、医師の診察は週1~2回、一度の診察は長くても1時間程度です。

その他の大部分の時間に患者さんと関わるのは看護師です。

必然的に、患者-看護師関係が良くも悪くも患者さんの病状に影響してきます。

そこで、看護師にとっては、患者さんとよい関係を築くこと、また医師には見せない患者さんの様子を主治医と共有することが大切な役目となります。

また、長い時間を患者さんと過ごす看護師には、時に主治医には見えない問題が見えてくることもあります。

しかし、その時心に留めておく必要があるのは、精神科において、医師と患者さんの治療関係は契約であり、その枠組みを犯してはならないということです。

医療現場に「契約」という言葉がそぐわないと感じる方もいるかもしれませんが、精神科では、患者さんと医師が共通のゴールを見失わないために、治療契約という考え方が一般的です。

契約は患者さんと主治医の同意に基づきますが、治療が患者さんを中心としたチーム医療なのは、身体科と変わりありません。

そこで、治療契約をスタッフ全体で共有するためにカンファレンスを行いますが、その調整も看護師が担うことが多いようです。

 

3、精神科は自分を見つめる場である

 

精神看護の現場は、患者さんのケアと同時に、自分を見つめ、人間について学ぶ場でもあります。

憎悪や暴力など人間の昏い部分を見聞きするのは日常茶飯事、差別や格差などの社会の嫌な場面に立ち会うこともよくあります。

そんな中で、患者さんや患者さんを取り巻く状況に陰性感情を持ってしまうことも少なくありません。

しかし、陰性感情は自分の鏡です。

よくよく自分の心を掘り下げてみると、患者さんに対して抱いた陰性感情は、自分の中の気付きたくなかった部分にも当てはまることが多いのです。

患者さんの脆弱性と向き合いつつ、自分の弱さとも向き合わざるを得ないのは気力のいる作業です。

しかし、かつても今も、同僚にはこのようなしんどさも精神科の魅力と言う人が多いのです。

以前一緒に働いていた医師も、「精神科に進んで関わる人には、ドクターでもナースでも心理士でも、多かれ少なかれ素養があるんだよ」と話していました。

一方で、妄想や幻覚に苦しみながらもポジティブに生きる患者さんを見て、人間て何て面白いんだろう、愛おしいんだろうと感じる場面もたくさんあります。

以上のように、仕事の中でのこのような感情労働を受け入れられるか否かが、精神看護に向いているか否かの一つの指標になるかもしれません。

 

4、精神科ナースは患者さんと遊ぶのが好きである

 

患者さんは週に数時間の診察以外の時間を、病棟で思い思いに過ごします。

多くの精神科病棟には、畳コーナーがあり、将棋や囲碁、麻雀台、卓球、雑誌、新聞などが揃っています。また、 専用庭に畑や花壇があったり、精神科単科病院の場合はジムや陶芸用の部屋まであることもあります。

そこでは患者さん同士が交流し、小さなコミュニティが生まれます。

そしてその中に、看護師も混ざって日々遊んでいるのです。

もちろん、ただ遊んでいるわけではなく、患者さんの様子を観察しているのですが、看護師も人間です。

園芸、卓球、麻雀など、自分が好きな分野の集まりに入っていき、素で楽しんでいることもしばしばです。

看護師も複数いますから、自然とそれぞれのコミュニティに散らばっています。患者さんの方も、「あの看護師は麻雀が上手いから誘おう」とか、「卓球はおばちゃん看護師にはきついだろうから、若い新人さんに声をかけよう」などと話しています。

そして、そうやって「遊んで」いる時というのは、意外に素が出るものです。患者さんがポロっと本音を話してくれたりもするのです。

 

5、精神科と身体化の橋渡し

 

精神科の看護師として、総合病院ではリエゾンナースとして活躍する道もあります。

リエゾンとは、連絡役や橋渡しなどの意味があり、医療業界では特に精神科と身体科をつなぐ役割を指します。

これまでリエゾンと言えば、医師がメインの役割を担っていました。

身体科の患者さん、特に移植などの大きな手術前後や、終末期の患者さんのメンタルフォローが大きな役割です。

しかし最近は、リエゾンナースとして活動する看護師も増えています。

主にドクターや臨床心理士とチームを組み、身体科の患者さんのメンタルフォローに当たっています。

また、身体科の看護師への教育を依頼されることもあります。

看護師であれば学生時代に精神看護については勉強していますが、実習以外で患者さんに関わったことはない人も多いと思います。

手術などで精神疾患を持つ患者さんが入院した際に、幻聴や妄想のある患者さんの対応に困った経験のある方もいるのではないでしょうか。そのような現場に赴いて、精神科患者さんへの対応などをレクチャーします。

これらのリエゾンナースとしての業務は、主に精神科専門看護師が担っているケースが多いようです。

 

6、精神科ナースはプライベートとの両立がしやすい

 

最後に現実的な魅力を紹介したいと思います。

精神科は総合病院でも単科病院でも、比較的残業が少なくなっています。

そのためプライベートとの両立もしやすく、結婚後も子育てしながら働きやすいと言われています。

子育て経験者が多いので、若手の看護師が子どもの病気などで休む際も、気遣いをしてくれる先輩が多く、よい循環が生まれています。

それからこれは病院にもよりますが、総合病院ではお給料に危険手当が上乗せされている病院もあります(精神科手当、勤労手当など名称は様々です)。

もちろん責任を伴う業務への対価ですが、お給料がアップするのは嬉しいですよね。

ただし、精神科単科病院の場合は、総合病院に比べて基本給は低めの傾向にありますが。

以上のように、精神科は向き不向き、好き嫌いの大きな科ではありますが、興味を持ったら一度見学に来てみてください。実際に働くか否かはさて置き、精神科に少しでも関心のあるナースが増えてくれれば嬉しく思います。