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どんな職業にもある「あの時こうしておけばなぁ」という一種の後悔。

その後悔が現在も仕事をする動機となることがあります。

今回記事を執筆してくださった看護師Mさんもそんな一人です。

 

140368s看護師として病院で勤務していると、入院や退院する患者さんも多いため、いろいろな出会いがあります。ただ、病棟にもよりますが入院患者さんは大半が高齢者のことが多く、異性との出会い場となることはとても少ないです。

また、看護師への教育体制がしっかりとられている病院では、看護師と患者さんが個人的に連絡先を交換することなどは禁止されています。周りの結婚している看護師の友人は病院内で出会った方と結婚した人はいないくらい、病院の中では出会いはほぼありません。

異性との出会いではなく、今回は、脳神経外科病棟で勤務したいたときに出会った患者さんとのエピソードをお伝えしたいと思います。

 

どうして自分は看護師になったのだろうかと思い悩む日々

 

右手と右足の力が入りにくいという主訴で外来を受診し、入院してきたTさん、70代の女性、脳腫瘍の摘出手術目的で入院してきました。勤務していた病院では、プライマリーナーシングであったため、一人の看護師が入院している間ずっと受け持ちをするという形でした。そのため、日勤での勤務でもその患者さんを受け持ち、夜勤でも受け持つ形となり必然的にその患者さんと関わることは多くなりました。

急性期の病院でもあり、当時新卒で入職してから3年目でしたが、とにかくやらなければならない業務が多く、受け持ち患者さんであっても業務以外でゆっくり時間をかけて話すこともできない状況でした。自分の勤務時間に仕事を終わらせることもできず、毎日残業が続きました。勤務が終わって帰宅するのは毎日22時を過ぎる状態が続き、精神的、体力的にも疲れ果て自分がどうして看護師になったのか、どんな看護がしたいと思っているのか、自分の看護観という考えさえも多忙な業務の中でわからなくなっている状態でした。

そんな中でもTさんは、私が訪室すると必ず笑顔で迎えてくれて、私が勤務のときは嬉しそうな表情で迎えてくれて、少しでも時間がとれたときには自分の子供の時の話や、息子さんが小さかったときの話をしてくれていました。脳神経外科の患者さんは寝たきりだったり、会話ができる方が少なかったこともあり、Tさんの笑顔に看護をしているこちらが癒されているのを実感していました。

Tさんは脱腫瘍の摘出術をうけて、1度は退院しましたが、自宅療養を数か月した後、再発したため再入院してきました。再入院してきた患者さんは過去に受け持っていた看護師が受け持ち看護師となります。再度担当の看護師となった私に、再発してしまい、つらい状況の中でも笑顔でいてくれたのです。話す言葉もだんだんと発声がうまくできずに、話していることが理解しにくい状態になっても、ニコニコとしている様子は看護させてもらっている立場の私からもとてもありがたい存在でした。

言葉がしっかり話せなくなったり、歩行ができなくなったりなどTさんの状態は少ずつ低下していき、反応も乏しくなっていきました。その後、話すことも、自分で動くこともできなくなり、眠るような状態になった後、最期を迎えました。

 

Tさんの死に涙が止まらなかった

 

Tさんが亡くなったのは、私が勤務してないときで、後日出勤したときに亡くなったことを知り、先輩たちの前でボロボロ泣きました。多くの患者さんと関わり、死というものに

慣れているかのような感覚だったのですが、そのときは自分の家族が亡くなってしまったかのような感覚でした。当時は自分ができる限りのことをしているつもりでいましたが、Tさんとの関わりは後の自分の看護師としてどのようなことがしてきたいのかということへのつながりを与えてくれたように思います。まだ3年目であった私を看護師として信頼して、勤務にやってくる自分を待っていてくれたということは、看護師としての責任と、もしかしてもっとTさんに提供できた看護が他にもあったのかもしれないと、違う観点からの看護を考えるきっかけにもなった患者さんでした。

現在は老人福祉施設にて勤務していますが、病院で勤務していたときにはやらなければならない業務に追われて、患者さんともまともに話す時間を作ることもできないことが多かったです。自分のやりたい看護師の仕事ってこれだったのかなと疑問に思っていた中で、ゆっくり時間をとって患者さんと話すことで患者さんの気持ちや不安をきいたり、なにか対処できることはないかと考えたいと思い、急性期病院から老人福祉施設に転職しました。

老人福祉施設では点滴をしたり、採血をするなどの医療行為はほとんどしませんが、精神的に不安定になる方がとても多いです。そのようなときには入居者の方の話をきいてどのようにしてもらいたいと思っているのかをゆっくりきいて、自分の体験談や、わかりやすく説明をすることで安心感を与えることができるようになりました。

これも、Tさんに対する看護の中で忙しい中でももっとTさんに関わって、ゆっくり話をしておけばよかったなという、後悔と反省があったからです。

一人の患者さんとの出会いと別れで、ひとつ学ぶことができその後の看護師として働くことへのやり甲斐へとつなげていくことができました。

Tさんとの出会いがなければ、看護師という仕事を続けられていたかどうかもわかりません。Tさんとの関わりでたくさん学んだことがありました。伝えられなかった感謝の気持ちを心に持ちながら今後も看護師として頑張っていきたいと思っています。