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毎年冬になるとノロウイルス胃腸炎や感染症の感染者が急増し、病院や施設で働いていると自分もいつ感染するか不安ですし、他の患者さんへ蔓延しないか心配になりますよね。

患者の生活を整える看護師は、プロとして感染媒体となることのないようにしなければいけません。ウイルスが目に見えないからこそ、しっかりと感染経路を把握して対応することが大切です。

ノロウィルスに関する基礎知識

 

ノロウイルスの形状

ノロウイルスは直径約30~40nmで、エンベロープという構造を持たないために、アルコール消毒剤が効きにくいことが特徴です。エンベロープというのは脂質性の膜のことで、アルコール消毒剤で壊れる性質があり、エンベロープのあるウイルスはそれにより失活化します。

 

 ノロウイルスの流行時期

ノロウイルス胃腸炎・感染症は年間を通して発生していますが、特に11月から翌年の3月までに患者数が増加します。

 

 ノロウイルスの感染力

ノロウイルスはヒトの小腸の細胞に感染して増殖すると言われていて、ウイルス量が10~100個程度で感染が成立してしまいます。感染者の便1g中には100万~10億個、嘔吐物1g中100万個のウイルスが含まれていることを考えると、例え手についても分からない程度だということが分かると思います。

 

 ノロウイルス胃腸炎・感染症にはワクチンも治療薬もなく、対症療法が行われる

ノロウイルスは現在でも人工的に培養できないことから、様々な研究やワクチンの製造が進んでいない状況です。今日提唱されているノロウイルスに対する対策などは、ノロウイルスに似た構造のウイルスで実験などが行われ、得た結果から言われていることです。

研究が進んでいないため治療薬もありません。そのため、脱水に対して補液、腹痛に対して痛み止めなどを出す対症療法が行われます。しかし、ウイルスの排出を邪魔すると長引かせる原因となるため、下痢止めは投与しません。

小児や高齢者は脱水・嘔吐による窒息などで死亡する可能性が高いため、十分に観察する必要があります。

 

 潜伏期間と症状

ノロウイルスが体内に侵入してもすぐ症状が出るわけではなく、24~48時間の潜伏期間を経て症状が出現します。潜伏期間の間は他人にウイルスをまき散らすことはありません。

その後、嘔気・嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状が出現し、発熱・倦怠感・筋肉痛・寒気などの症状を伴うことがあります。それらの症状が通常は3日程度で軽快します。症状が出現しはじめると他人にウイルスをまき散らす可能性がありますが、症状が治まった後も便の中には最長3週間程度はウイルスが排出される可能性がありますので、その間は対策を講じないと感染が拡大してしまいます。

また、ノロウイルスに感染していても症状のない不顕性感染の場合もあり、不顕性感染でも便に排泄されたウイルスは感染性があるので、注意が必要です。

 ノロウイルスが体内に侵入するまでの感染経路

ノロウイルスは食中毒と感染症の両面があります。

食中毒の感染経路として、

①ノロウイルスが蓄積した二枚貝などを食べる

②調理者や調理器具にノロウイルスが付着しており、調理過程でノロウイルスが付着した食品を食べる(接触感染)

感染症の感染経路として、

③感染者の便・吐物処理の際に、手などにノロウイルスが付着し、何らかの形で口に入る(接触感染)

④2m以内の距離にいる感染者が勢いよく噴射した吐物や便などの飛沫を吸い込む(飛沫感染)

⑤便・吐物処理が不十分で、乾燥したノロウイルスが歩行・風・掃除などで舞い上がり、何らかの形で口に入る(塵埃感染)
などがあります。

本来、感染経路というのは飛沫感染、接触感染、空気感染に大別されます。⑤の塵埃感染は空気感染の一種と言われていて、飛沫核が空気中に停滞することで起こるものではなく、物理的刺激でウイルスが舞い上がって移動する経路のことです。

 

 感染経路を遮断する対策

(1)食品は十分に加熱する

ノロウイルスはカキなどの二枚貝の中で、成長とともに蓄積すると言われています。ノロウイルスは、中心温度が85~90℃になってから90秒以上加熱すると失活します。二枚貝に限らず、ノロウイルスが流行する冬季は、調理の過程に必ず熱を通すことが大切です。

(2)食品以外の調理器具などは熱湯消毒する

食品と同様、ノロウイルスに汚染された可能性がある、または予防的に衛生的にしておきたいなどという時は、85℃以上の熱湯で1分以上煮沸消毒するか、50℃以上のお湯で30分以上加熱するとノロウイルスは失活化します。食器などに限らず、タオルなど、汚染された部分を洗い流してから熱湯に入れましょう。

(3)調理をする前、吐物・便を処理した後、トイレの後、患者さんに触れる前後は手洗いを行う

ノロウイルスはエンベロープがないのでアルコールにより失活せず、失活させるには、熱か消毒が有効ですが、手に行うわけにはいきませんよね。ノロウイルスに限ったことではありませんが、ヒトの手を介してウイルス・菌は蔓延していきますので、手に付着したウイルスを洗い流せば媒介させることはありません。そのため、手洗いは全ての感染対策の基本と言えます。
手洗いをする場合は、指輪や時計などは外し、十分に石鹸を泡立てて、指と指の間や親指の付け根、爪の間など洗い残しの多い部分に注意し、流水で洗い流しましょう。この一連の流れを40~60秒かけて行うことをWHO(世界保健機関)は推奨しています。洗い終わった後も蛇口に直接触れないように注意しましょう。

(4)吐物・便などの処理を行う際は、標準予防策をとり、広い範囲を処理する

実際に、ノロウイルス感染者の嘔吐物や便を処理する際には、手や体になるべくウイルスがつかないよう、標準予防策をとってから行います。
標準予防策とは、使い捨てのマスク、手袋、エプロン、シューカバーやアイシールドなどを装着することで、処理し終わった時に、汚物と一緒に捨てます。
標準予防策をとったら、汚物が乾燥しないように、まず中心部に紙を乗せ、0.1%次亜塩素酸ナトリウムを静かにかけ、その他の準備を始めましょう。
また、嘔吐物や便や飛び散った際、必ずしも目に見えるとは限りませんので、どのくらいの範囲を汚染区域として対応するかという心配があります。例えば、1mの高さから嘔吐した場合、広さは半径2.3m、高さも2mくらいまで飛び散ったという研究がありますので、処理する際は、想像以上に広い範囲を処理する必要があることを頭に入れておきましょう。この範囲には、処理が終わるまで人が通らないようにすることも大切です。

(5)消毒には次亜塩素酸ナトリウム製剤が効果がある

ノロウイルスを失活化させる消毒薬は各種ありますが、安価で手に入れやすいものに次亜塩素酸ナトリウム製剤があり、例えばミルトン、ハイター、ピューラックスなどです。ミルトンは希釈計算が簡単で、ピューラックスはより安価という利点があります。実際に嘔吐物・便などを処理する際は、大量に水溶液が必要ですので、より安価なピューラックスが実用的でしょう。

吐物・便に直接汚染された衣類、寝具、食器、床、吐物・便そのものの処理などは一時洗浄した後、0.1%に次亜塩素酸ナトリウム製品を希釈した水溶液に10分間浸けます。直接汚染されていない場所は0.01%に希釈した水溶液で拭くなどします。吐物・便の処理の際は、必ず使い捨てのマスク、エプロン、手袋、シューズカバーなどを装着してから行いましょう。

また、時間をかけるとウイルスが乾燥し、塵埃感染する可能性がありますので、乾燥しないよう対策をとることや、素早く処理することが重要です。
次亜塩素酸ナトリウム製品はミルトンは1%、ハイターは5%、ピューラックスは6~7%と、製品により濃度が違うため、希釈する場合は製品の濃度を確認する必要があります。

また、次亜塩素酸ナトリウム製品は暗所で保管し、希釈した水溶液は最長でも1日で使用しないと、消毒効果が低下する可能性がありますので注意しましょう。希釈した水溶液は、ほとんど無色に見えますので飲料水と間違えないよう表示することも大切です。
次亜塩素酸ナトリウムを使用する際のデメリットは、金属を腐食させたり、衣類を脱色させる効果があることです。金属に使用したあとは水拭きしたり、脱色しても問題ないかを考えて使用する必要があります。

ノロウイルスに感染した人は、本当に症状が強く辛かった、二度と罹りたくないと言うことが多いですよね。ウイルスは目に見えませんが、感染経路と対策を理解しておくことで、多くの感染の危険から逃れることがありますし、周囲の人を守ることもできます。実際に、発生した時に落ち着いて処理できるよう、イメージしておきましょう。