beauty-1132641_1920

日本でおよそ6年間、看護師として働いてからここ、イギリスの地で新しく看護の道を歩み始めた私。気がつけばもう15年近くも前のことになります。今の若い世代の方達でも私と同じように国外で働いてみたいという方も多いのではないのでしょうか?そんな方たちのために、私の体験から海外で看護師として活動するということについて少しお話してみたいと思います。

1、イギリスの病院事情

 

私の働いているイギリスではそもそも医療の制度が全く日本と違います。細かいことについてはこちらでは省略しますが、簡単にいうと日本でいう患者様はお客様、というような観念は存在しません。というのも国民全員の医療費が国民保険で全額まかなわれているため、入院・治療費については基本的に無料だからです。そうなると必然的にベット稼働率がパンク寸前になるわけで、結果的にいかに効率よくベットをまわすかということに集中せざるえません。ということで早期退院を目標にしていますから、患者の回転は速く、日本でいうところのプライマリーナーシングはオンコロジー(癌専門治療)などを除くと、基本的に一般病院入院中ではとりません。

 

2、看護師以外の看護師?

 

というのも変なのですが、正看護師以外で看護師のようなことをする人達がいます。看護助手といえばそうなのかもしれませんが、このNursing Auxiliary(略してNA) と呼ばれるひとたちなしでイギリスの病院はまわりません!NAは患者の清拭、食事介助からストマや膀胱カテーテルバックの測量まで、主な日常ケアをどんどん行います。このNAの中にはグレードがあり、一定のトレーニングを受けてグレードがあがると、採血や留置針までも行います。レントゲンなどの患者の移動にはポーターと呼ばれる人達がいて、電話をすると患者を迎えにきてくれるのはもちろん、検査がおわると連れてかえってきてくれます。その他にももちろんクリーナー(掃除をする人)、ホステス(お茶や食事を配る人)、クラーク(病棟事務)などなど・・・業務の細分化が徹底されています。表向きは看護師が専門知識を使った業務により集中できるということですが、実際のところ・・・節約ですよね。看護師を雇うよりNAを雇ったほうがよっぽど安くてすみますから。

 

3、トレーニングに追いかけまわされる日々・・・

 

私がもう20年ほど前に取得した日本の正看護師免許、仮に今、日本に帰って看護師として就職しようとした際に問題なく使えると思います。が、ここではちがいます。免許を保持していても実際臨床で使っていなければあっさり無効になってしまいます。病院で働いていてもさまざまなトレーニングがあり、それも一度受ければ終わりではなく毎年受講するもの、2年毎に受講するもの・・・数えればきりがありません。例えば看護師なら誰でもできるであろう静脈穿刺(採血)でさえ、このトレーニングをうけなければできませんし、たとえ毎日やっていたとしても定期的なアップデート・トレーニングを逃してしまうとできなくなってしまいます。

 

4、専門看護師

 

正看護師に加えて一定のコースを終了すると得られる専門看護師の資格。糖尿病専門看護師から、心不全専門看護師、失禁コントロール専門看護師にいたるまで。えー、こんなのもあるの?というくらい多岐にわたります。まあこれも医師を雇うより専門看護師を雇ったほうが安いということが大きいのでしょうが、患者にとっても看護師のほうがアクセスしやすいですし、病棟の看護師にも臨床にそったアドバイスをしてくれるので大変助かります。ハイレベルな専門看護師になると薬の処方もできるので、在宅緩和ケアのための鎮痛剤などに迅速な対応ができます。救急外来では胸痛トリアージュと呼ばれるものがあり、胸痛で受診・搬送された患者は専門看護師による診察を速やかに受け、時間が勝負の血栓溶解治療や緊急アンジオグラフィーまたはステント留置に大きく貢献しています。

 

5、日本の看護育ちの私が思うこと・・・

 

最初の数ヶ月、いや数年はショックと戸惑いの連発でした。今まで信じていた常識が覆されたり、なぜ自分より資格の少ない人々がやっていることを、看護師の私がしてはいけないなんて、など。でもそういうのって慣れますし、こちらでの看護師キャリアのほうが15年と長くなった今となってはまーそういうのもありかな、と。こちらにきてから日本の看護の良い点についてもたくさん気がつきました。また、日本の昔からの風習、医者が上で看護師は下、みたいな考え方は全くもって存在しません!もともと別の業種ですし、お互いを尊重し合って協力しながら働いています。ほかにもイギリスで看護師をしていて楽しい話、怖い話などネタはつきませんが今日はこの辺で。最後に看護は全世界、どんな人種、どんな言葉でも原点は同じだと信じています。そこからどこへ向かうかは本人次第。これからもよい看護を目指してがんばっていきましょう!