310019見当識とは、時間や場所、人物を正しく認識する機能であり、脳の高次機能のひとつです。

いわゆる、物事に見当をつける機能で、この機能に異常がある状態のことを失見当識もしくは見当識障害と言います。

以下に、見当識障害の原因と症状、治療と対応法について説明していきます。

 

 

・見当識障害の原因

 

見当識障害が起こる原因としては脳炎、脳血管障害、認知症などがあります。また、一時的なものとしては睡眠障害が起こっている時にも見られることがあります。

最も代表的な例は認知症(特にアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症)によるものです。

 

 

・見当識障害の症状

 

 

認知症による見当識障害の場合、認知症の進行具合によって現れる症状に変化がみられます。

下記に具体的な症状について説明していきます。

 

  1. 時間や季節の失見当識

 

比較的初期に現れる症状の1つで、日付や時間が分からなくなります。

そのため、深夜に洋服へ着替え始める、夕食を朝食と間違えるなどの行動がみられるようになります。

また、さらに病状が進行すると季節も分からなくなるため、真冬に半袖で出かける、真夏に厚手のコートを着るなどの行動も見られるようになるため、脱水や感冒等を起こして体調に異変をきたす危険性があります。

  1. 場所の失見当識

認知症の進行が中等度進んだ時に現れることが多く、自分の今居る場所が正確に判断することが出来なくなります。

そのため、外出中に迷子になってしまう、自宅に居るにも関わらず「家に帰る」と言って外にでかけてしまう、更にはトイレの場所が分からなくなり、トイレ以外の場所での放尿や失禁が見られるようになります。

特に外出先や家族が目を離した隙に一人で外出してしまった時に迷子になってしまうことは、思わぬ事故や事件に巻き込まれてしまう可能性があり、大きな社会問題となっています。

  1. 人の失見当識

認知症の進行が重度になってくると、今まで接してきた人の判別が出来なくなってくるだけではなく、自分自身のことも分からなくなってきます。

そのため、自分より年下の家族に対して姉だと話すようになったり、自分の年齢を20代だと説明するようになるなどの行動が見られるようになります。

進行すると今まで一緒に暮らしていた家族のことも分からなくなってしまうため、家族は大きなショックを受けます。

 

・見当識障害の治療

 

脳炎の場合は抗ウイルス薬の投与を行い、脳血管障害の場合は点滴投与などによる内科的治療の他、重症の場合は手術などの外科的治療が行われます。

認知症によるものの場合は、内服薬の投与が検討されます。しかし、内服薬により認知症が完治することはなく、進行を遅らせることが目的となります。

認知症の治療薬としては、ドネペジル塩酸塩(アリセプト)、メマンチン塩酸塩(メマリー)、ガランタミン臭化水素酸塩(レミニール)、リバスチグミン(イクセロンパッチやリバスタッチパッチ)があります。

その他、認知症による周辺症状の緩和のために様々な漢方薬や薬剤が使用されます。

 

・見当識障害の対応法

 

脳炎や脳血管障害による見当識障害の出現時は緊急受診が必要になるため、ここでは認知症による見当識障害出現時の対応方法について説明していきます。

認知症による見当識障害が出現した場合、一緒に暮らしている家族もパニックとなり怒ってしまうことがあります。

しかし、それは病気によって出現している症状の1つであり、本人はわざと行っているわけではありません。

また、怒ってしまうことで興奮を招き、さらに症状を悪化させてしまうことにも繋がります。

よって、まずは本人の行動や話に耳を傾け、話を合わせていく姿勢が大切になります。

下記に、具体例を上げて説明していきます。

 

  1. 時間や季節の失見当識の例

 

食後に「ご飯はまだ?」と話し始めた場合、家族は食べ終わったことを前提として話を進めてしまいがちなため、いつまでたっても話が噛み合わなくなってしまいます。

このような場合、本人の言葉は否定せずに現在の時間や食べた食事の内容を伝えることや、1回の食事を数回に分けて配膳する等の工夫を行うと良いです。

季節に合わない服装をしていた場合、無理に着替えさせようとすると本人を興奮させてしまったり自尊心を傷つけてしまうため、「肌寒くなってきたので上着を着ましょう」や「汗をかいているので一枚脱ぎましょうか」と声掛けをし、自主的に更衣をしてもらうと良いです。

真夏に着込んでいる場合は脱水も起こしやすいので、脱いでもらえないときは水分補給を促すようにしましょう。

  1. 場所の失見当識の例

家に居るにも関わらず「家に帰る」といって出ていこうとした場合、家族は慌てて「家に居るでしょ?」と止めようとしがちですが、無理に止めると逆上してしまうことがあります。

そんな時は、本人の帰りたいという気持ちを受け入れ、帰りたいと思っている先の話を聞いてみましょう。話すことで気分が紛れることもあります。

また、あまりに頻繁に出ていこうとする場合は、玄関先に本人のお気に入りのものを飾る等をして他のことに気が向きやすくすることも効果的です。

家族が気づかない間に出て行ってしまうこともあるため、持ち物に連絡先を書いておきましょう。

トイレ以外の場所で放尿や失禁してしまう場合、家族は本人を責めてしまいがちですが、責めることで自尊心を傷つけるだけでなく症状を悪化させてしまうこともあります。

そんな時は、本人の様子を観察し、そわそわしている等の様子の変化が見られたらトイレに誘導するようにしてみましょう。トイレの場所に分かりやすく絵や文字を貼ることも効果的です。

しかし、あまりに失禁が頻回である場合は泌尿器系の疾患であることもあるため、本人の状態を観察しながら泌尿器科受診も検討しましょう。

  1. 人の失見当識の例

家族のことが誰か分からなくなっている場合、家族はその都度訂正してしまいがちですが、それにより本人が不快な思いをしてしまいます。

そんな時は、本人の話に合わせた会話を行うことで、本人も心穏やかに過ごすことができます。

 

上記、簡単ではありますが見当識についてまとめてみました。

認知症により見当識障害が出現した場合、一緒に暮らしている家族の負担は大きくなってしまいます。

しかし、焦りやイライラは誰のためにもなりませんので、自分なりのリラックス方法を見つけることや他者へ相談してみること、時には社会資源を活用するなどをしてストレスを抱え込まないようにしていきましょう。